アイスランド―暗号通貨マイニング業界の天国

　　暗号通貨マイニングはビットコイン（BTC）やイーサリアム（ETH）などの暗号通貨の取引承認に必要となる複雑な計算（コンピューター演算）作業に協力し、その成功報酬として新規に発行された仮想通貨を得ることである。しかし、計算には莫大なコンピューターパワーが必要なため、基本的には企業やグループで行われることが多い。

　　アイスランドの国土面積は10.3万ｋ㎡であり、人口は36万である。この面積は北海道（8.3万ｋ㎡）より広いが、人口は北海道（52万）より少ない。さて、この北ヨーロッパの島国は、1990年に世界で最も先進的な国の1つになった。2008年のリーマンショックで国家破産の危機に直面したが、現在は世界的に、暗号通貨マイニング業界の楽園になっている。

　　アイスランドは北極圏に近い高緯度に位置しているため、 夏の平均気温は約10度、冬の最低気温は約-5度と、年間を通して低い平均気温となっている。マイニング業界にとって、これは理想的な環境と言える。

　　マイニングの大きな問題点の一つが、マイニング時にマシンから発生する「熱」である。コンピュータを急速に冷却するためには、低温環境や専門の冷却装置が必要となる。低温環境の要件を満たすアイスランドはまさに、天然の暗号通貨鉱山の冷却装置である。そのため、アイスランドに設置されたほとんどのマイニングファームには冷却装置を設置する必要がない。これはすなわち、マイニングコストをその分抑えられるという意味だ。

　　そして、アイスランドはユーラシアプレートと北米プレートの境界に位置するため、活発な地殻変動により、豊富な地熱と水力の資源をもたらす。そのため、アイスランドは100％クリーンエネルギーを使用している国である。地熱発電により、電気代も他の化石燃料を主体とする国々より安くなる。

　　激安の電気料金は、大量なエネルギーを消費するマイニング企業にとって、間違いなく大きな魅力がある。ドイチェ・ヴェレのデータによると、ビットコイン単体で見ても、マイニングで消費されるエネルギーは年間約9000億kWhに及び、人口550万人のフィンランドの一年間の電力消費量を上回っている。しかし、アイスランドにとって、この程度の電力消費量は高くない。アイスランドの地熱資源がほぼ無限に存在するため、国内の60を超える大規模なマイニングファームに電力を供給した上で、西ヨーロッパ諸国に売る余剰電力まで確保できる。

　　電気代が安く、放熱コストも低いアイスランドは、暗号通貨マイニングのために生まれた国と言っても過言ではない。

　　アイスランドのエネルギー生産が飽和状態に近づいているという報告があるが、この「エネルギー」は主に地熱と水力を指している。新たな風力エネルギーを加えると、アイスランドのマイニング産業はさらなる発展の可能性に満ちている。ただし、マイニング報酬の低下や各国の規制強化など、暗号通貨マイニング産業の今後にはまだまだ課題が残る。

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